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泊まってみた!くにさき半島(海浜旅庵しおじ編)

更新日2020年12月21日

泊まってみた!シリーズについて

 六郷満山日本遺産推進協議会のメンバーは「くにさき」に住んでいますので、「くにさき」のお宿になかなか泊まる機会がありません。しかし、「それでは「くにさき」の旅の本当に良いところを皆さんにお伝えできない!」ということで、協議会メンバーが実際にくにさき旅を楽しんでみて、本当にオススメできる旅・お宿を紹介するコーナーを作ってみました!

【TRIP1の旅庵蕗薹編はこちら】

TRIP2:国東半島で美食探訪&海の見える静かなお宿 ~海浜旅庵しおじ~

 2020年も年の瀬、今回は日本遺産事業で究極のツアーを計画するため、食に関するプログラムについてアドバイスをいただくべく、日本遺産プロデューサーやシェフの方たちをくにさき半島にご招待。
 某グルメマンガさながらに地域の美食を探訪し、究極のツアーやレシピ開発に関するイメージを膨らませるためのコースとなりました。学芸員のまっちゃんが、おおいた味力食うぽん券(ちゃんと自腹です!)を握りしめ、くにさき半島フルコースにいざ出発です。

今回の旅の目的地の略地図 観光として行ける場所のみ表示しています

GOTOイートのチケット(25%お得です) 感染防止対策をしっかりと

~ 旅の1日目 ~

 シェフの方が来られるのは2日目から。最初は健康志向のメニューを提供しているお店「花琳舎(豊後高田市河内地区)」へ。
 ギャラリーも兼ねているお店は古民家を改修したもの。絵画や陶芸、手工芸などがずらりと並び、ゆっくりと流れる国東半島の時間を楽しめます。
 メニューはプレートランチ1,500円。メインは鮭と近くの畑で採れたお野菜(サツマイモ・玉ねぎ・人参)のホイル焼き、それにおからコロッケ・ほうれん草としいたけのキッシュ・朝採れ野菜(春菊・レタス・ラディッシュ)のサラダ、しょうがとスパイスの体温まるスープ。デザートと飲み物(コーヒー・紅茶・梅蜜ドリンク)をついてきます。
 やさしいお味で、自家栽培野菜が新鮮で、とてもおいしくいただきました。

 ※花琳舎では、おおいた味力食うぽん券は使用できませんのでご注意ください。

花琳舎の玄関 古民家風で、民泊などもしています。

やさしいお味のランチプレート

その後、ガイドや地域事業を巡って、国東半島の資源をいかに活かして日本遺産を盛り上げるか、協議や検討を行いました。

~ 旅の2日目 ~

 シェフの方を迎えての2日目。昼食に選んだのは、田染小崎にある「そば六郷(りくごう)」。数年前に田染小崎の古民家を改修してオープンしたお蕎麦と和食コースのお店です。
 重要文化的景観にも選定される田染小崎の水田を眺めながら食事ができるものお店の魅力です。初夏にはちょうどホタルが出るエリアに位置しています。

重要文化的景観に選定される田染荘小崎の風景

古民家風の落ち着いた佇まい

 本格的な魚の熟成方法を修行された店主の松嵜さんが、一点ずつ市場で見定めて仕入れた魚の料理は、どれも旨味とコクがあって、食べた人を魅了しています。
 今回は魚介類を中心に見たいということもあり、5,000円の魚コースにしました(そば六郷さんでは、季節の食材をふんだんに使ったお料理を提供していますので、今回のメニューは一例になります。ご注意ください。)。

 前菜に出てきたのは、豊後高田産ゆで落花生(おおまさり)と、鹿児島県産さざなみだいのナムル。ゆで落花生は、産地ならではの食べ方で、落花生の品種によっても味わいが異なります。さざなみだいの方も濃い味付けながら、魚の味をしっかりと感じられる一品でした。
 そしてノコギリガザミのポン酢和え。ガザミは香々地港などで獲れるワタリガニの一種で、夏にはオスが、冬の時期にはメスが美味しくなってきます。今回もメスのガザミのほぐし身がたっぷり贅沢に使われており、芳醇な味と香りを心ゆくまで楽しむことができました。

ゆで落花生とさざなみだいのナムル

芳醇な香りのノコギリガザミのポン酢あえ

次にマテ貝の酒蒸しと、旬の熟成魚の刺身。マテ貝は関東の方ではあまり見かけることがない珍しい食材で、真玉海岸では塩を巣穴にかけて飛び出たマテ貝を獲る潮干狩りが楽しまれています。実はほぼ一年中獲ることができ、最も美味しくなるのは冬なんだとか。酒蒸しは臭みがなく、強い旨味を楽しめる一皿でした。
熟成魚の刺身は、舌に置くとねっとりとした食感と濃い旨味が楽しめ、通常の刺身とは全然違った味わい。炙りは旨い脂が舌に乗った次の瞬間には、まろやかさと軽やかさを感じられました。

くさみの無いマテ貝の酒蒸し

脂の乗った炙りの刺身

 本日のメインは、究極の美味と言われる高級魚チャイロマルハタのしゃぶしゃぶ。刺身としてもいただけ、しゃぶしゃぶによる火の入れ方によっても、味わいが変わるというレクチャーを受け、いざ実食。
刺身として食べるとしっとりとした舌触りとしっかりとした旨味を感じることができ、火を通すと食感が徐々にプリプリとしたものとなり、軽やかな味わいに変化していきます。最初見たときには、しゃぶしゃぶにしては分厚いと思いましたが、火の入れ方によって様々な味わいを感じることができ、面白さも感じながら食することができました。
 箸休めの芋の天ぷらは、低温でじっくりと時間をかけて揚げており、石焼き芋のような甘さでした。

究極の美味と言われるチャイロマルハタのしゃぶしゃぶ

低温でじっくり揚げた芋の天ぷら

 そして最後は店名にもあるお蕎麦。豊後高田産の蕎麦の十割そば。通常のつゆの他に、チャイロマルハタの旨味がとけ込んだ鍋にそばを通していただきました。香り高い豊後高田の十割そば、新しい蕎麦のいただき方、市内に住む人にも知ってもらいたいと思いました。
 デザートにはイチゴ。フォークでサクッと切れる感じで食感も軽く、甘さもちょうど良いイチゴでした。

十割り蕎麦はつゆだけでなく、しゃぶしゃぶの出汁でもいただく

イチゴの品種は桃の香(もものか)

長閑な風景とともにゆっくりと時間が過ぎます

 国東半島産の野菜や海産物も多く使われていた料理を見て、シェフの方もレシピ作成の際の食材のイメージが少し湧いたようでした。
 その後は、国東半島の文化資源や、地域食材を探訪しに地元スーパーなどを巡りました。

~ 夕方18時ごろ、海浜旅庵しおじ(かいひんりょあん しおじ)に到着 ~

 香々地の中心部から高島地区に向けて更にひと山越えていきます。高島地区は中心の沢が豊後高田と国東の境界になっている集落で、高島港から船を出して海産物を獲る漁村です。集落の海上には、干潮の時にだけ道が現れる"馬の瀬(まのせ)"があり、集落のシンボルとなっています。

 この風情ある漁村と馬の瀬の風景が眺められる少し小高い場所にあるのが海浜旅庵しおじ。本館には個室が3室(1人部屋と3人部屋)と泊まれる広間があり、馬の瀬が見えるしおじの湯、マッサージなどを提供するヒーリングルームがあります。

 しおじの夕食では、香々地港や豊後高田などで獲れた食材も取り入れた料理でした。
 この日は、冬に旬を迎えるナマコを使った酢ナマコが提供されました。コリコリとした食感が美味しく、ナマコ好きには量もうれしい一皿でした。
 刺身では、国東半島の特産としても知られる太刀魚の炙りに注目。炙られた身の香ばしさと太刀魚のスッキリした旨さが美味しい一品でした。

香々地産のなまこがたっぷり

太刀魚のあぶりは香ばしくも軽やかな舌触り

 夜になりましたので、地域のお酒とのマリアージュの探求も解禁ということで、西の関の秘蔵酒をいただきました。まるでリンゴを思わせる芳醇な香りと、甘味の中のスッキリさが特徴の大吟醸。かつて海外で行われた品評会で高い評価を受け、大吟醸ブームの先駆け的存在となったとされます。日本酒のお供には牡蠣やウニをいただき、その豊かなマリアージュを確かめました。

西の関・秘蔵酒 リンゴのような甘い香りが特徴

お酒のお供は牡蠣やウニ

 その晩は食を旅行のコースにどのように活かすか、また、国東半島の現在の課題点などについて話し合いながら、夜は更けていきました。

~ 旅の3日目 ~

 朝、しおじの湯に再び入ると、窓からしっかりと馬の瀬が見えました。
 おいしい朝食のピックアップはお味噌汁。カボスが入っており、さわやかな香りが眠気を覚ましてくれます。

味噌汁にカボス。大分人は結構よくやります。

朝の馬の瀬と港町

 3日目は、地域ならではの食材・調味料の探訪をメインにした行程を組みました。
 豊後高田市・長崎鼻のOLIO(オリオ)では、菜の花・ひまわりオイルの試食を行いました。花畑で有名な長崎鼻では、オイルの搾油工場があり、無農薬・無添加のオイルが採れます。
 ひまわり油は、油独特のエグみなどが少なく淡泊な味わい。食材の味を活かした料理に適しているそうです。
 一方の菜種油は、オレイン酸が66%、リノレン酸が8%など、身体に良い脂肪酸を多く含み、幅広い料理に使えます。

フィオーレ&OLIO(オリオ)外観

ひまわり油と菜の花油

菜の花畑は3~4月が見ごろです。

夏はひまわり。九州屈指の栽培面積です。

 国東市・富来港側で建設中のうにファームでは、計画中のウニの畜養と環境保護の可能性についてお話をいただきました。雑食性のウニは、海底の海草を食い荒らし、魚の住処を失くしてしまうようで、駆除したウニを商売にすることで、海を守ることに繋がるという取り組みをされています。
 実は2日目の晩に、近海で取れたウニを開いてみたのですが、中身はあまり入っていませんでした。丹精込めて畜養することで、8週間程度でしっかりと中に身が入るようです。

うにファーム様への視察風景

しおじでウニをさばく様子。口の部分からザクっと開きます。

 国東市武蔵町古市にある安永醸造(かねまつ)でもお話しを伺いました。安永醸造は、創業130年の老舗で、醤油や味噌、加工品を生産していますが、近年パッケージなども刷新し、かわいいデザインの商品が多くあります。
 醸造所では、昔ながらの道具類、麹室などを見せていただきました。

安永醸造所さんの看板

古い木樽やもろ蓋など、歴史を感じる醸造所を見せていただきました。

 旅の最後、昼食は国東市国東町小原にあるBistro Espoir(ビストロ エスポワール)さんで、くにさき神仏料理(かみほとけ りょうり)の国東Sランチをいただきました。国東Sランチは元々1,500円で提供されていたものを、六郷満山1300年にあわせて、よりリーズナブルな値段に再設定したもの。
 店主の末綱さんは、文殊仙寺でのダイニングアウトの企画にも参画したり、国東高校双国校とのコラボメニューの赤鬼バーガー・青鬼バーガーなども提供していただいたりと、地域の食のチャレンジに多く携わっていらっしゃる方です。

 国東産の食材にこだわって組まれたお品書きは、旬や季節にあわせて変化します。
 前菜には鱧とひじきのムース、タコのラビコットソース、魚の南蛮漬け。鱧とひじきのムースは、なめらかな舌触りで、淡泊な味とほのかな磯の香りが素晴らしい一品でした。
 メインには桜王豚のフィレ肉の天ぷら。やわらかな桜王豚のフィレ肉と、サクサクの衣のハーモニーがたまらない一皿でした。

左から鱧とひじきのムース、タコのラビコットソース、南蛮漬け

桜王豚のフィレ肉の天ぷら

 3日間にわたる美食探訪のアテンドもここで終了。
 今回の旅を振り返ってみると、国東半島の旬の食材はもちろんのこと、エリアの各地で腕を振るっているシェフの皆様の仕事に改めて触れ、多くの人に知ってもらえる機会を設けていきたいなと感じました。究極のツアーづくりの際には、是非ともその行程に組み込んで参りたいと思います。

 ぜひ今回の旅を参考に、国東半島を訪れてみてはいたかでしょうか?